2010/01/31

組織の能力

現在は、環境が継続し不変な時代から、構造が変わり歴史の発展段階が転換しようとしている真っ只中です。エネルギーの分野では、化石燃料から非化石燃料への転換がはじまっています。炭素文明から水素文明への移行です。ブロードバンドは社会・経済・技術において変化を促します。競争ルール、方向性の変化です。

現在の世の中は、すべてが組織で動いているといっても過言ではありません。組織は生き物です。生き物は本能的に生命の持続を図ります。何よりも自らの生命の永続を最優先するのです。

組織の規模が拡大すると、質的転換が発生します。軍隊でいえば、200人までの規模は分隊、小隊や中隊からなる組織で、中小企業の規模です。指揮官は通常、分隊長は軍曹、小隊長が少尉、中隊長が中尉。いずれも一人の長が全員の顔も気心も知って指揮監督できる規模の組織です。1000人までの規模は大隊となり、指揮官は大尉です。中堅企業の規模です。一人の長では目が届かなくなり、管理監督のための組織体系に質が変わります。中隊以下の部隊に足して、具体的な作戦指示や目標を指揮するのです。さらに拡大して3000人を超えると連隊となり、連隊長は大佐と階級の名称が変化します。企業規模でいえば準大企業となり、管理機能の複雑化と監督機能の高度化に対応した組織形態が必要とされます。さらに拡大して数千人規模になると、旅団、師団、軍団となり、指揮官は将校が担います。現場指揮だけでなく遠隔指揮が必要とされます。企業規模は上場企業です。さらに数万単位の規模では、方面軍、総軍となり、総合的な判断状況が重要となり、管理職種も多様化していきます。企業規模でいえば多国籍企業群です。これらの部隊は国家の指揮の下、立案された作戦を遂行するため、広範囲に戦略を実行します。

危機はもちろん、金融から始まっていますが、もはや単なる経済危機のレベルではなくなってきています。環境が変化すること事態はどの分野でもあり、自然なことです。しかし複雑になった環境の中で、多くの分野が次々と経験のない事態に直面し、模範解答のない困難な問題が発生しています。世界の枠組みや、これまで当たり前のごとく思われてきた価値観が崩れ始めているということです。

大規模で破壊的な変化に対応していくには、組織も形態の転換が必要とされます。自然界における成長・発展は変化です。我々が自然に対した時に、何の疑いも無く受け入れるこの事実は、組織では受け入れ難くなります。規模の大きな組織や変化が極めて少なかった業界ほど試練の時代です。大規模な変化や、破壊的イノベーションに対応する場合の最悪のアプローチは、現行組織を抜本的に変えてしまうことかもしれません。組織を変身させるつもりが、自らを支えていた能力を破壊してしまうこともあるのです。

大企業は、「破壊的変化」が迫ってきていることに気付いているはずです。ほとんどの大企業は、有能な人材を持ち、商品の品揃えも豊富で、技術ノウハウも第一級、そのうえ資金にも余裕があります。未曽有の危機に直面した企業に、非正規まで含めたすべての雇用を守る余裕はありませんが、変化に対応するための経営資源は十分あるのです。しかしながら時代の変化に対処できず、新興企業にポジションを奪われてしまう現象がおきています。

優秀なマネジャーの条件の一つは、「適材適所」 の人事を行い、人材育成ができることです。個々の業務に適した人材を配置すればプロジェクトに適した組織になると信じていますが、それは単なる思い込みに過ぎません。有能な人材グループを別々の組織で働かせた場合、能力は同程度であるのに、その成果に大きな差が出る場合は何故でしょうか?「組織自体にも能力がある」ということです。組織の能力は、メンバーの資質やその他の経営資源とは別個のものです。企業を継続的に発展させていくためには、人材評価だけではなく、現在の組織が対応できる変化と、対応できない変化を評価する必要があります。現在の制約要因を明らかにし、自分が切れる手札を認識することです。

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