2010/02/13

既存の企業文化が変化への対応を阻む

デフレとは、「経済が成長しないこと」ではなく、「経済が縮小していく」ことです。
日本の需給ギャップは30兆円~40兆円といわれています。
出典 今週の指標 国内需要デフレーターは3四半期連続のマイナスに

中小・零細企業において、創業者が与える影響は絶大です。社員はどのように仕事をすべきか、組織の優先事項はどうあるべきか、創業者には明確な持論があります。創業者の判断に誤りがあれば、当然ながら企業が失敗する可能性は高くなります。健全な判断がされれば、創業者の問題解決や意思決定の方法が正しいことを社員は目の当たりにし、その手法を体得することができます。同時に、経営資源、特に人材の影響力は多大です。要となる人材が一人、二人、組織に加わったり離脱しただけで、企業の成否に多大な影響を及ぼします。企業の能力の重心が人材にあるうちは、新たな問題に対応するために能力の入れ替えを行うことは比較的簡単な対処方法なのです。

創業者の考えを反映した判断基準にしたがって経営資源が配分され、企業が財務的にも成功すると、その実績を中心に企業としての価値基準が形成され、組織は拡大します。企業が異なればその価値基準も異なりますが、売上高と収益性はどの企業も共通の価値基準です。組織拡大の過程では、社員の中には創業者と直に話したことのない人も出てきて、リーダーだけでは組織を全て把握するのが不可能になってきます。企業規模が大きく複雑になるほど、組織全体の社員を教育して、戦略方針やビジネスモデルとの整合性をとりながら一人ひとりが重要度を判断できるようにすることが、より大切になってくるのです。数人で始めた企業が数百人以上の社員を擁する規模になると、何をどのように行うべきかについて、社員全員の合意を取り付けるのは、優秀な管理職にとっても至難の技となり、社員に自律的ながらも一貫した行動をとらせることができる管理ツールが必要とされます。管理ツールとは、明確な価値基準と意思決定のプロセスです。プロセスの本質は、社員が常に業務を一貫した方法で成し遂げられるように設定されることです。変更することを前提にしてはいないので、変更する必要が生じても、簡単には変えられない仕組みになっています。ある業務のために設計されたプロセスに従えば、その業務を効率的に行える可能性が高いが、異なる業務に同じプロセスを使うと機能しないのです。組織に一貫性のある明確な価値基準が浸透しているかどうかは、企業経営の優劣を測る重要な尺度でもあります。なぜなら、価値基準には企業のコスト構造あるいはビジネスモデルが反映されているからです。価値基準とは、企業の繁栄のために社員が従う原則なのです。

社員は恒常的な業務をこなすうちに、意思決定のパターンが固まっていき、既存のプロセスと価値基準に従って重要度を判断しはじめ、これらを中心に企業文化が形成されるようになります。出発点は人材を中心とした経営資源ですが、次に定義されたプロセスと価値基準へと重心がシフトし、そして最終的には企業文化へと変容するのです。しかし、企業の能力の重心がプロセスと価値基準に移り、それが企業風土・体質という形で組織に刻み込まれると、組織の能力を変えることはきわめて困難になります。社内に広く浸透した一貫性ある価値基準は、一方で、組織ができることを限定してしまうからです。組織に備わった能力は組織に何ができるかを規定するが、同時に、その組織にはできないことも規定しているということです。企業文化は組織にできることを限定してしまうため、企業が直面する問題が根本的に変化すると、能力の欠如となって現れます。

実体経済の縮小は、経済活動自体の自己崩壊を促します。単に物価が下落していくだけでなく、生産活動そのものが縮小していくのです。(倒産や失業の発生。)デフレ解決には、「需要の拡大」こそが必要であり、それ以外に対処方法は無いのです。経営方針も流動的にならざるを得ない状況下、消費者のニーズを喚起することは困難といえます。デフレの下で企業が存続していくには、必要な経営資源の保有とプロセス・価値基準が変化に対応できるかどうかが鍵になります。

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