2010/02/21

急増する住宅ローン破綻と金融機関

全米抵当貸付銀行協会(MBA)19日の発表によると、住宅ローン全体に占める返済延滞期間が90日以上のローンの割合は全体の5.09%に増加した。ローンの返済が90日間滞ると、銀行は通常、物件の接収に向けた手続き開始する。差し押さえの対象となったローンの割合は4.58%に増加。
2月19日 ブルームバーグ 米国では差し押さえに直面する可能性のある住宅は2009年10-12月(第4四半期)に過去最高水準に増加した。
格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は1日、米商業不動産市場について、空き店舗率が高止まりし、賃貸料が下落する中、最悪期は脱していないとの見方を示し、多額の損失を生み、金融システムを脅かす恐れがあると指摘した。S&Pはリポートで「銀行が抱える商業不動産へのエクスポージャーの影響はまだ完全に表れていない」としている。住宅建設や商業不動産建設セクターでは既に問題が顕在化しているが、金利が低く、債権回収に十分なキャッシュフローがある現状では、商業不動産ローンや多世帯住宅セクターでは影響が認識されていないとの見方。金利が上昇し、賃貸料がさらに落ち込めば、こうしたセクターでも差し押さえが増加し、価格が一段と下落するとの見方を示した。
2月1日 ロイター 米商業不動産市場、一段と悪化の可能性=S&P

2010年の米国銀行破綻は200行以上と予測されています。経済全般の落ち込みは各種統計指標に現れます。経済の弱体化は、失業率の上昇、住宅価格低下とローンのデフォルトとなり、銀行の破綻が加速していくのです。サブプライム・ローン市場の影響はプライム・ローン市場から商業用不動産の分野に波及しようとしています。商業用不動産に波及した場合、今後数年間で数百以上の銀行の倒産が発生すると予想されています。1989年、S&L危機のピーク時の破綻行は534行でした。金融の問題が再び注視されるようになるのは時間の問題であり必然です。

給与カットで住宅ローンが返済できず、マイホームを手放す人が都市部で目立っている。東京、大阪、名古屋の3地裁が2009年度上期(4~9月)に扱った住宅など不動産の競売件数は、07年度下期の約2倍。不動産業界によると、少しでも高く売ろうと「任意売却」を選ぶケースも増えている。不動産鑑定会社「三友システムアプレイザル」(東京)によると、3地裁が09年度上期に扱った土地、建物、土地付き建物、マンションの競売件数は計5271件。08年度の下期より525件多く、2704件だった07年度下期の約2倍に増えている。
1月11日 asahi.com 住宅ローン滞納、増える任意売却 競売よりも傷浅く

日本でも給与所得は減少の一途を辿り、失業率は5%で高止まりしています。収入は今後も減り続けることは避けられず、ボーナスの支給が出来ない企業がさらに増加していくのです。住宅ローン破綻が急増し、競売が急増すれば住宅価格は一層の下落を見せます。住宅ローンの条件変更で先送りしたとしても、民主党がそのような状況に陥る政策を採り続ける限り破綻は避けられません。日本版サブプライムローン問題も進行しているのです。

株価は予想収益の割引現在価値を反映します。企業にとっては収益がただ伸びるだけでは不十分であり、コンスタントに伸び率を維持しなければならないという強迫観念を促します。小さな企業なら食指を動かす規模のビジネスチャンスは、大企業には食い足りなくなります。企業の規模が大きくなったことと引換に、小規模の市場に参入する能力を喪失しているのです。この能力喪失は経営資源の変化ではなく、価値基準の変化です。大手銀行で収益を拡大してきたのも、損失を拡大してきたのも投資銀行部門でした。公的資金の注入を受けた際、投資銀行業務を縮小し、リスクを軽減させ不良債権処理による経営健全化を目指すのが本来の企業の姿です。しかし、大手銀行は規制回避のため公的資金を返済し、再び短期的な収益確保の為にリスクの高い投資銀行業務の拡大を選択をしました。

米国の最大の関心は、米国債を長期・安定的に外国に買わせることにより、財政負担を海外の国に付け替えることにあります。中国が米国債購入額を減少させる政策に転換した現在、米国債の安定消化に向けた政策が採られようとしています。一つはボルカールールを実施し、米銀に米国債を買わせることです。ボルカールールが導入されると、商業銀行は投資銀行業務ができなくなるので、海外のドルを国内に還流させる方向に動きます。89年に採用された手法と同様、余剰資金を長短金利差による長期債購入に充てる方向に誘導させ、金利差益を原資に不良債権を償却していくのです。米国債の大量発行による懸念は、米銀の強力な購入で払拭されます。もう一つは、日本に米国債を買わせることです。日本の年金資金を海外運用に充てる案や郵貯銀行の資金を米国債に充てる案が聞こえています。日本は自国の財政より、米国の財政を優先する選択を自民党政権から継続しているのです。結果、膨大な不良債権が日本経済に蓄積されていきます。

問題は、米国の本質的な問題が噴出し、出口戦略の発動はやっぱりダメだったとなるのがいつになるのかということです。89年の不良債権処理は5年で収束しましたが、今回の危機は当時より破壊力が大きく、まだ序盤です。長期に渡って蓄積されたバブルは数年で縮小するものではなく、アメリカの景気が好転するのは期待できません。時間をかけながら、破綻の影響は他の市場や金融機関に広がり、最後は現行の金融システムが危機的な状態になるところまで進んでいくのです。

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