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2010/01/04

多様化・多極化時代と相互依存

世界的な金融危機が招いた経済危機は、ウォール街の貪欲さが世界を引き回したことによって起こりました。ある大きな出来事が社会秩序の変化の引き金になるという歴史の転換が再現されます。

金融市場のグローバル化という勢いが弱まると、各地域経済がそれぞれにかかえている独特の課題が鮮明に浮かび上がります。多様化・多極化時代ゆえに、それぞれが世界に背を向けて自己の課題に取り組むわけにはいきません。では多様化・多極化時代の国際的な秩序はどう進化していくのでしょうか。また、多様性からの利益を引き出す為に、各国はどうお互いを補い合っていくのでしょうか。

米国では、バラク・オバマ氏が「チェンジ」をスローガンに、大衆参加の大統領選挙を制したことは、人々が何らかのパラダイム変化の可能性を予感し、求めつつあることを明らかにしました。大きな政府(財政赤字)を受け入れざるを得ないとしても、過剰な消費、外国からの資金供給依存によって支えられてきた経済構造に、パラダイムの変化が生じなければなりません。

中国では、「改革・開放」「和讃(わかい=調和のとれた)社会」という課題を完成させるには、日本の総人口を上回る2億人以上の人口を10年、20年かけて第1次産業から移動させなければなりません。それを可能にする雇用をつくり出すには、少なくとも毎年8%程度の経済成長が必要です。8%成長とは、日本から見れば羨むべき高さですが、中国にとって日本のゼロ%成長にも匹敵する死活水準です。しかしこの成長が維持可能になるには、非効率なエネルギー消費、経済組織や建造物に関する巨大化信仰、流動労働力の搾取、政府の過剰・恣意的な干渉など、パラダイムの変化が必要です。

日本の課題とは、人口、経済社会構造の変化に応じた世代間の関係を、コミュニティとして再構築しえていないことから生じる「不安」の解決です。国民が政治に求めているのはバラマキではなく、各世代がそれぞれ安定した展望を持ち自律的に将来に立ち向かうための社会保障の再設計と実行です。だがそれを明快な言葉で語り、実行しうる政治勢力はまだ結集していません。

米日中の課題に共通するのは、人々の意識や価値観、世代間関係、雇用といった、人間にかかわることです。各論での課題は地域的であり多様な形で存在しています。だが、多様性は相補性の親とも言えます。国際間の多様性そのものが、それぞれの国・地域に固有な課題の解決に、相互に役立つ可能性もあるのです。多様性の時代は相互依存の時代とも言えます。

中国と日本の間には、環境親和的・再生可能エネルギー技術と、持続的に拡張する市場機会との補完性があると指摘されます。今後、数十年のうちに、中国は日本とともに最も老齢化した人口構成の国となり、米国が先進国の間では最も若い国になります。中国のドル資産の蓄積は当面は理にかなったものといえます。米国の外交政策を拘束することになりますが、米国は人権・平等といった価値観への自らのコミットメントを明らかにすることによって、中国の社会構成の進化に道徳的示唆を与えることができます。

日本と米国の間では、自然・気候環境の保全維持に補完的な役割を果たします。米国は大規模なジオ・エンジニアリングや、革新的なクリーン・テクノロジーの開発にリーダシップを取る可能性がある一方、日本は生活や産業に根ざした環境親和的技術に独創性・競争性を発揮できます。

人間的要素にもとづく多様化の時代における市場競争は、量より質の競争になります。機械、機器によっては完全に代替されないという意味で、不可欠とされる人間の認知資産を活用し、環境親和的な技術や社会貢献に積極的な企業が、製品市場や資本・労働市場によってますます評価される傾向にあることが、国際規模で学術的に明らかにされつつあります。

2010/01/01

本末転倒の正常化

21世紀は、あらゆるビジネスにおいて「持続可能で循環型であること」がルールになります。世界の誰もが自由競争経済の持続を望んでいます。社会主義の復活ではなく、抑止力の回復です。

問題の本質はウォール街のやり方を単線的に広げた国際金融の強引さであり、世界は成長を続け大不況に陥ることはないと拡大路線をひた走った国際企業の過信でした。実体経済や企業収益と不釣り合いな金融機関の利益を当然視する「金融立国」の論理は破綻しました。実体経済の規模や成長率を大幅に上回る金融資産の肥大や収益率が持続可能なはずありません。金融資本主義とグローバル化の問題です。危機に立つのは資本主義ではなく、グローバリゼーションの有りようです。

米国中心のメカニズムは既に修正が始まっています。互恵・補完関係にある国が集まり、ある程度の「自律的経済ゾーン」を形成しながら、世界不況の回避と成長維持でゾーン同士が連携するでしょう。新しいグローバリゼーションが模索されます。日本はアジアや中東などとも「共生ゾーン」を作り、経済安保の厚みを増さねばなりません。貿易黒字をため込む一方で購買力を実現しない経済大国の国民経済の在り方にも問題があります。世界的な貯蓄・投資の不均衡と赤字国への資金還流を拡大した結果は赤字国だけの責任ではありません。不均衡是正に伴う金融から実体への回帰は正常化の基本です。経済運営の見直しが必至となります。

2009/12/25

価格波乱の時代続く

金融・経済危機の収束には時間がかかり、変化率が5割を超すような価格波乱の時代は続きます。商品市場にとって昨年の変化は価格の乱高下だけではありませんでした。2004年から5年連続で最高値を更新した原油高騰はついに世界最大の消費国、米国の需要を失速させました。国際エネルギー機関(IEA)は世界の石油需要は25年ぶりに前年を下回ったとみています。

米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題と住宅バブルの崩壊が深刻になって以降、市場の不安は個別の金融機関から金融機能の不全に広がり、昨年後半には実体経済から雇用不安へと波及しました。オバマ米政権への政策期待が高まると同時に、危機と不安は核心へと向かいます。

失業の増加は新興国で政情不安、先進国では社会不安を招きます。昨年後半にタイやギリシャで起きたような混乱の発生リスクは増加します。政情不安は需要国で起きれば一段と需要を冷やす半面、資源国で発生すれば景気低迷下でも供給不安から価格を反騰させてしまいます。当面の懸念はインフレからデフレへと180度転換したものの、2010年の図式は景気悪化→商品安にとどまらない可能性があります。米国の財政悪化を材料にドル売り圧力が一段と強まれば、行き場を失ったマネーが再び商品市場に流入する懸念も否定できません。景気の影響を受けにくく、在庫率も低い穀物には常に天候異変による減産リスクがつきまといます。

価格急落と加速した円高は、海外での食料・資源確保に出遅れた日本勢にとって挽回チャンスとなります。価格変動や需要減少でさえ、企業には従来の値決め方式や過剰設備を見直す好機とも言えます。世界経済が新興国を組み込んで成長していく以上、金融危機が去ってもリスクは残ります。安定から波乱対応型へ早急に変化しなければなりません。