情報の在りかはWeb上。情報を操作するソフトウェアの在りかもWeb上。パソコンや携帯端末はWebにアクセスする窓にすぎません。いまやグーグルやヤフーなどが無料で提供している各種サービスを使うだけで快適なインターネットライフを送ることが可能となりました。わざわざソフトウエアを購入して自分のパソコンにインストールしなくても、電子メール、チャット、スケジュール管理、写真アルバムなど、個人ユーザーが必要と感じている機能の大半はWebから調達できるのです。
ソフトウエアが他の商品と異なるのは、一度作った製品は劣化することがなく複製することも容易な点です。優れたソフトウエアが一つあれば、それを世界中の人が共有することも可能です。ユーザー1人あたりに換算したソフトの単価は小額になり、開発費用を広告収入で賄うことができれば、ユーザーには無料で公開するというサービスモデルも成り立ちます。このような動きは個人向けソフトばかりでなく、業務用ソフトの分野にも波及しています。業務用ソフトをA社、B社、C社が別々に開発するよりも、3社が共有することを前提にすれば、1社あたりの開発費は三分の一で済みます。共有するパートナーが5社、10社と増加すれば、さらに負担は小さくなります。
このような発想によるIT業界の系列化は「クラウドビジネス」と呼ばれています。インターネットで繋がっている巨大なサーバー群を大きな「クラウド=雲」に見立てて、遠隔から同じ機能を共有したり、レンタルするイメージを表しています。ユーザーは無意識のうちに、グーグルやヤフーといった大きな雲にぶら下がることで便利で豊富なサービスを利用しています。インターネット中心の情報処理形態の典型例です。
消費者にとっては便利な時代が来たが、その反面、存続の危機に陥っているのが各種のパッケージソフトを開発、販売してきたソフトウエア・メーカーです。パソコン量販店の陳列棚をみてもわかるように、ソフトウエア製品の販売スペースは縮小の一途を辿っています。特殊なものを除いた定番といえるものについては無料が常識になりつつあります。
インターネット黎明期からサーバー機能の共有やレンタルができる仕組みは色々と登場しているため、クラウドといっても特別に新しいものではないが、クラウドビジネスは単なる構想ではなく、現実として急速に世界に浸透しつつあります。クラウドビジネスは、従来の情報技術産業の構造を変えるとともに、新たな業界再編を促すでしょう。
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