2010/01/03

変化する近所付き合いのスタイルと町内会・自治会の役割

地域や家族などの「つながり」を分析した内閣府の国民生活白書(2007年版)は「地域と深いつながりを持っている人は少ない」と指摘します。全国の約3400人に聞いたところ、近所付き合いの関係は総じて浅く、「生活面で協力しあうご近所さんが一人もいない」と答えた人の割合は65.7%。
地域のつながりが十年前に比べ弱くなっていると考える人は31%に上ります。白書は「つながりによる精神的なやすらぎや充実感を得られなくなれば生活の豊かさを実感できないだろう」と警告しています。
内閣府の国民生活白書

現在の地域活動は各地区の町内会や自治会を中心に行われること(これを地縁活動という)が多いが、住民の家族構成やライフスタイルが変化してくれば、地域活動への関わり方も変化します。
近隣との関係は挨拶程度か、それ未満というのが一般的なようです。都会では「隣に住んでいる人の顔を知らない」ということが珍しくなくなって相当の年月が経っています。

ところが近所付き合いの希望について、「ほとんどもしくは全く付き合いたくない」と考えている人は全体の4%に過ぎません。ご近所の人達と仲良くなりたいという気持ちは、どの人の心の中にもあるようです。昔ならば地域のお祭りや奉仕活動などを機会にしてご近所同士が仲良くなったものだが、現代では各家庭でライフスタイルが違うこともあって、仲良くなるきっかけが掴めないままでいるのでしょう。国民生活白書の中では、これを「地域のサラリーマン化」と分析しています。

《近所付き合いに対する希望》
7.1% とても親しく付き合いたい
39.9% わりと親しく付き合いたい
48.9% 付き合いはするがそれほど親しくなくてよい
4.0% ほとんど付き合いたくない

大半の人は近所付き合いの必要性を何らかの形で感じているようです。この心理を裏付けているのが町内会・自治会への参加率で、加入している世帯は全体の約9割と非常に高いものの、実際の活動に積極的に参加しているのは、その中の1割程度に過ぎません。ほとんどの住民は自治会費だけを払い「あとの活動はすべてお任せします」というスタンスです。

《町内会・自治会への参加率》
51.5% まったく参加していない
35.8% 年に数回程度の参加
9.2% 月に1回程度の参加
1.9% 週に1回程度の参加
1.0% 週に2~3回の参加
0.6% ほぼ毎日

隣人との過剰な付き合い(親しさ)までは好まない層が半数近くいるのが現代の世情を表しています。つながりを求める一方、自らの安住を守るため、ともに暮らしを送る「隣人」すら警戒し、過剰な自衛に走るケースも目立ち始めています。新居を選ぶ際、将来の近隣住民の情報を集めようと、探偵会社に調査依頼が舞い込む。「袋の中まで確認するほどゴミの分別にうるさい住民はいないか?」「物音に過敏な人は?」。都内の業者によると、五年前に比べ依頼件数は倍増。探偵も「ここまでやるか」と驚きを隠せません。

自分に利益がない限り心を開かない人が多くなりました。濃密な付き合いを自任する人もメンタルなつながりは薄いのです。結果として孤独を深めるという皮肉な構図が浮かび上がります。

0 件のコメント:

コメントを投稿