2010/01/08

自動車がブロードバンドにつながる時代

ICTの波がすべての産業構造において革命を起こします。パソコン、携帯電話に続いて大きな市場を形成するIT分野として自動車があります。自動車においては、今後10年以内に自動車がブロードバンドにつながる時代になるでしょう。

自動車内のIT機器としてカーナビゲーション・システムが普及しており、殆どのカーナビには、FM-VICS(Vehicle Information & Communication System)の受信機が内蔵されています。1996年から2009年9月時点での累計出荷台数は2518万台に達しています。
財団法人 道路交通情報通信システムセンター

平成21年9月末現在の国内自動車保有台数は7915万台。
財団法人 自動車検査登録情報協会

カーナビの普及度合い 450万台。
社団法人 日本自動車工業会
JAMAGAZINE 2008年10月号

通信契約をしたユーザーが250万台程度なので、潜在需要は10倍以上という見方もでき、今後急速な普及が見込まれます。カーナビは単なる「道案内」からマルチな機能に進化し、自動車は「カーコンピューター」へと変化します。「ITS」とは「Intelligent Transport Systems」の略で、IT(情報通信技術)を活用して人・道路・車両の三者をネットワークした交通システムを意味します。交通事故や渋滞等の道路交通問題の解決や安全性や効率の向上、新産業の創出を目的としています。

■ITSの開発分野と予想されるサービス
(1)ナビゲーションの高度化…高度なカーナビシステムの開発、移動情報サービス。
(2)自動料金収受システム…ノンストップ料金徴収システム(ETC)開発、ETCサービス。
(3)安全運転支援…自動運転・危険警告回避システム開発、走行情報サービス。
(4)最適化交通管理 …信号制御システム開発、経路誘導・交通事故対応サービス。
(5)道路管理の効率化 …特殊車輛通行管理システム開発、工事情報サービス、災害対応。
(6)公共交通支援 …公共交通(バス等)運行状況情報サービス。
(7)商用車の効率化 …配車計画、運行管理支援サービス。
(8)歩行者支援 …危険防止システム開発、経路・施設案内サービス。
(9)緊急車両の運行支援…緊急通報システム開発、経路誘導サービス。

国土交通省道路局ITSホームページ

平成11年2月に発表された電気通信技術審議会答申によれば、ITS情報通信関連市場において、2015年までの累積で約60兆円の経済効果、約107万人の雇用を創出とされています。2001年度より開始されたETCサービスが、コア的サービスとして本格的に展開されています。「ETC車載器=自動決済装置」と考えれば、ドライバーに対して極めて自然な形(お金を支払う感覚を強く抱かせない)で、これらの商品や情報を販売することができることになります。PC向けの各種インターネット・サービスは、決済システムが未整備のまま普及してしまったため有料サービスが手掛けにくい状態ですが、ITSについては、ETCが本格導入さえれた後に、各種有料サービスを提供していくことで、PC向けネットサービスと同じ轍を踏むことはありません。ETC車載器の普及が、ITSをビジネスとして成功させるためのキーとなります。自動車内に搭載されたコンピューター(カーナビや ETC機)とワイヤレスによるデータ通信技術は応用範囲が幅広く、自動車メーカーやIT関連メーカー各社では、この大市場でいち早くシェアを奪取するための研究開発が進んでいます。

トヨタのITSへの取り組み
NECのITSへの取り組み
パナソニックのITSへの取り組み

これら大手メーカーが研究~商品開発に取り組んでいるのは、
・有料道路自動料金収受システム(ETC)
・走行支援道路システム(AHS)
・交通管制システム
・道路交通システム
・公共交通支援システム(バス・レンタカー等)
・商用車支援システム(トラック・タクシー等)
・緊急車両支援システム
・ナビゲーションシステムの高度化(車両及び歩行者向け)
といったいわばインフラ整備分野で、コンテンツサービスはこれからの分野です。

トヨタ自動車はKDDIの通信回線を利用してカーナビへの情報配信を手がけています。通信が高速化すればやり取りできるデー夕の量が増加するため、活用の場はまだまだ広がります。一般の携帯電話市場が停滞する中、携帯会社にとっても自動車市場は魅力的な市場です。

自動車に通信端末を搭載。車の走行距離や加速・減速の状況などを記録し、携帯電話回線を用いて定期的に自動車メーカーに送信。メーカーは届いたデータを解析し、部品の交換時期や運転方法の改善を車の持ち主に提案。販売店からはがきやEメールを送るだけの場合に比べて、顧客とのコミュニケーションを強化でき、集まったデータを蓄積して細かく分析すれば、安全性能の向上などにもつなげられる。この通信回線で音楽や動画などを送信することも技術的には可能。NTTドコモは、数年後の実現を思い描き、既に複数の自動車メーカーと実用化に向けた協議を始めています。

整備されたインフラの中で「何に活用するのか」を考えれば、インターネット、携帯電話向けとして考案されたビジネスモデルや、蓄積されているコンテンツの中には、ITS 分野へと応用することによって収益化が可能になるものも少なくありません。PC向けサービスとしては無料でしか成立しなかった地域情報も、移動範囲が広い自動車の中で、現在の位置情報と連動した形でタイムリーに配信されるのであれば有料情報としての価値が生まれます。ただし、携帯電話と同様に、この分野は完全にオープンな市場ではありません。インフラ網を握る大手企業と上手に協力関係を築きながら、一部の権利を獲得することができた企業のみが急成長できる構図になります。

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