社会保障制度として位置づけられている、医療・介護・福祉業界は制度ビジネスであり、各制度の維持は財源の確保が絶対条件となります。制度ビジネスとは、行政による許認可事業です。したがってルールは行政によって創られます。行政の狙う政策と方向性が合致していれば、極めて健全な運営が可能になります。運営と経営は異なります。経営は成果を上げるためにルールを構築することができますが、運営は既に定められたルールの中で成果を上げることしかできません。なし崩し的に進む医療改革は行政の狙った政策の結果であり、誤った政策による人災です。現在の医療政策には、国家戦略も哲学もないのです。
医療を中心とするサービス組織のリーダーシップにおいて、その状況と状況がリーダーに求めるものをまず整理してみます。
第一に社会保障の機能強化の工程表のもと、政策誘導による医療機関の機能分化は、加速されざるを得なくなってきています。機能の選択にのみ関心が向けられやすいが、機能を云々する前に大切なことは使命です。つまり、安直に「機能」に向かう前に、何が機会で、何がニーズなのかを自問自答し、機会をとらえてニーズに応えていけるだけの能力が備わっているのかを徹底的に洗ってみなければなりません。これらの自問自答の知識成果が信念に裏づけされてはじめて使命(ミッション)たりえます。今日の医療をめぐる状況は機能選択・分化の一大前提条件として、リーダーに明確な使命を求めていると言っても過言ではありません。言い換えれば、時代の兆候を敏感にかぎ分ける知的臭覚と自分なりのコアの部分、すなわち使命を絶えずチェックし、確認しつつも、個別の事態には適宜、柔軟に折り合いをつけていく当事者能力が問われています。
第二に、医療サービス組織も、組織としての成果を問われ、成果により一層注目せざるを得なくなってきています。「機能」は、使命が成果を生み出すための手段として、再定着を迫られています。その意味でリーダーは、経過志向から成果志向にならなければいけません。つまり、「努力や資源の投入に見合った成果を上げたか」、「使命と照らし合わせ公正な成果を上げたか」「限られた人員をどう機能させるか」といったマネジメントの基本を再確認することがリーダーに求められています。
第三に、地域・患者のニーズが変わる、診療報酬制度や医療政策が変わる、疾病構造が変わる、そんな時代の大きな変化のなかで、医療サービス組織も、当然の反応として戦略を持たざるをえなくなってきています。規制のなかでの差異化、独創的な事業展開には体系的な戦略が求められます。事業環境を解読し、組織風土を活性化しつつ、過去・現在の業績に目配りし、使命と機能を通じて成果にリンクさせていく発想の土壌としての戦略の時代に、リーダーは対応しなければなりません。
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