2009/12/16

クラウドコンピューティングの収益モデル

インターネット経由でソフトウェアやサービスを利用するクラウドコンピューティングが、企業向け情報システムでも活用され始めています。ソフトウエアをオンラインレンタルする業者は、以前からも「SaaS(Software as a Service)(サース)」または「ASP(Application Service Provider)」とも呼ばれ、目新しいものではありません。

日本でサースが急速に普及するきっかけを作ったのが日本郵政です。2007年10月の発足に合わせ、顧客情報管理システムにサース方式を導入しました。サースの先駆者とも言える存在の米セールスフォース・ドットコムのシステムで現在、全国1200局、5000人超の社員が利用しています。これまでネット経由で重要データーをやり取りすることによる、データーの不正使用や情報漏洩といった不安を、日本郵政という公共部門の大規模な導入により企業側の認識を一新させました。

ソフト会社はサースの新サービスを続々と提供し始めています。その主役として注目されているのが「セールスフォース・ドットコム」のようなクラウド型で業務アプリケーションを提供しているソリューション企業の存在です。パソコンメーカーやソフトウエア会社にとって、クラウドコンピューティング時代の到来は、「製品(モノ)を販売して収益を稼ぐ」というビジネスの根底を覆されることになります。生き残るには、自らもクラウド型のビジネスモデルに転換することが重要です。グーグルやヤフーが提供しているサービスは、ソフトウエアをパッケージ製品として売るのではなくて、オンライン機能として提供することが既に可能になっていることを意味しています。

景気減速の影響で、大幅なコスト削減が見込めるサース方式を利用する流れはより加速します。企業が自社で情報システムを構築し、運用するには多額の資金が必要です。利用する企業側の意識としては、ソフトウエアにかけるコストは会社の規模が成長(または縮小)するペースに合わせた月々の変動費(利用人数×利用料)として賄っていきたいというニーズが強いのです。1ユーザーあたりのソフトウエア利用料が月額5千円として、社員が100名の会社なら年間にかかるコストは600万円です。ハードとソフトウエアは進化が留まることなく、すべて自前の設備として導入していったのでは過大投資になります。クラウドコンピューティングを活用すれば、サーバーの購入、新機能の追加によるソフトのバージョンアップ料や、システム管理のための人件費などはかかりません。社員の数が増えても契約コースの変更だけで済むため、経営者はIT投資コストを一定の水準に保ちながら、事業を拡大していくことが可能です。初期投資も少なく、社員数に応じた利用料でシステムを使えるため、資金余力が乏しい中小企業などで移行する流れは必然です。



ソフト会社やサースの提供元となるデータセンターを運営するシステム開発会社にとっては、事業拡大の好機とも言えます。ソフトは自前で所有せず利用するもの。市場拡大に合わせ、数年後にはこのサース方式の考え方がIT業界の常識となっているでしょう。

■セールスフォース
http://www.salesforce.com/

同社の主力商品は、社名が示す「Salesforce(セールスフォース)」という企業向けのグループウエア。各社員の営業活動が管理できる機能(日報管理)や、顧客情報や商品情報のデータベース、売上予測や経営指標の分析などができる総合的な営業支援ルーツになっています。

《セールスフォースが提供するオンライン機能》
●営業支援機能(セールスフォースオートメーション)
●カスタマーサービス&サポート機能
●代理店管理機能
●マーケティング支援機能
●コンテンツ管理機能
●アイデア管理機能
●顧客分析機能
●その他、業種別のアプリケーション

セールスフォースの収益構造は、ソフトウエアを販売するのではなくて、機能をオンラインで提供することにより利用料を徴収する仕組みです。その料金体系は1ユーザーあたり月額1千円~の設定で、利用したい機能によって月額3万円/1ユーザーまでの契約コースが選択できます。アプリケーションとデータはすべてセールスフォース側のサーバーで管理されているため、契約企業の側ではソフトのインストールやデータを保守するためのセキュリティ対策などの負担から解放されます。セールスフォースのオンライン機能を導入している企業は世界で5万1千社以上です。

0 件のコメント:

コメントを投稿