2010/01/10

不安定性の源泉

日本で人口問題といえば少子高齢化ですが、国連は中国の人口が1995年の12億人から2040年に16億人のピークに達すると推計しています。インドはその年に19.6億人となり、さらに人口は伸び続け、2050年には中国は14.1億人となるのに対して、インドは22.0億人に達すると推計。中東の人口は1970年の2億人から現在の5億人に達し、2020年には6億人になると予測しています。世界人口は2005年と比べて2020年代には20%近く増加し、77億人になっているでしょう。

人口問題は様々な不均衡を生み出します。世界人口のうち4分の1を占めるムスリム市民は、2030年代には3分の1に達することになります。イスラム教がキリスト教を超える世界最大の宗教となるのです。アメリカの政治学者サミュエル・P・ハンティントンは、『文明の衝突』において西欧文明とイスラム文明との対立を予見しました。

キリスト教全体としては、性行為は互いにすべてを与え合うオープンな関係を表現する場です。避妊することは、「本当のオープン」ではないということを意味します。子どもが生まれるか否かは、神が決定するという考え方です。ローマ・カトリック教会は、キリスト教全体の考えに同意すると共に、子供は神からの贈りものであり、神の姿に似せて造られたのだから、いかなる場合でも守らなければならないという考え方です。イスラム教の開祖ムハンマドは、結婚を「信仰の半ば」でありイスラムの慣行として強く推奨し、結婚という合法的形態の他に性行為を認めませんでした。イスラム教にとって、神の授ける子どもを拒否する避妊は原理的に歓迎できるものではありません。仏教は禁欲的で恋を奨励しません。しかしながら避妊が苦しみを救うことになるのならそれは良いことだと考えています。宗教倫理の存在と各宗派が勢力維持のため多産を奨励しているのも事実であり、人口抑制政策を妨げている要因になっています。

ドイツの社会経済学者グナル・パインゾーンは、『自爆する若者たち』で「ユース・バルジ」(過剰なまでに多い若い世代)の問題こそが、経済不安にも匹敵する危機として世界の未来を予測しました。ユース・バルジという現象を手がかりに人口数の不均衡から世界の将来を見渡そうとしたのです。人口増加は食料とエネルギーにおいて歪みを生み出します。パインゾーンは、過剰な人口には国外移住、犯罪、国内クーデター、内戦または革命、集団殺害と追放、越境戦争という六つの選択肢があると指摘しました。欧州の人口は、1500年の6千万人から1914年に4億8千万人へ増加しましたが、海外植民や征服戦争を選択し、1918年までに地上面積の10分の9を支配しました。

人口増は不完全雇用という現象も生み出します。世界経済低迷で一段と深刻化する失業や貧富の格差の問題はイスラム圏に象徴的に現れています。中東では人口の6-7割を25歳未満が占めており、これこそが20%台半ばという世界最高の失業率を中東で生む背景です。イスラム圏では膨大な新規学卒者が労働市場に流入し、大部分がそのまま失業者になる状態が継続します。エジプトやシリアでは、仕事のない公務員の過剰採用で失業率を抑えてきたがもはや限界に達しています。移住や就職・就労の機会を得てきた湾岸諸国は、砂上の楼閣だったことが判明しました。今後さらに実質失業率は上昇していきます。

急増する人口を背景に国際社会の中で自己主張する存在感は、国際秩序をますます不安定にする要因です。コーランに於いてジハードという単純で力強い思想は強い喚起力を持っています。異教徒との戦いです。中国に於いても民主化という思想は強い喚起力を持っています。内戦もしくは革命です。分裂・統合の歴史は繰り返すかもしれません。

人口問題は、現代の炭素文明と人口の崩壊を予見しています。炭素文明崩壊の処方箋として水素文明を学習しておきましょう。『水素革命近未来!』は教科書です。

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