労働組合の本来の機能は、弱い立場にある個々の労働者に代って団体交渉をすることです。最近ではストライキを武器にして過激な賃上げ闘争をするような労働組合はほとんど見かけず、毎年5月1日に行なわれる労働者の祭典メーデーへの参加者も減少。組合自体の活動が形骸化し、労働者も経営者(管理職)寄りの視点に変わってきているため、組合本来の機能は低下しています。会社側と対立するのではなくて、良好な関係を保つことで労働者の統率を図ろうとする「御用組合」が増加しているのです。
しかし今でも全国には約5.6万もの労働組合が存在しており、1千万人の労働者が加入しています。全国の労働人口に対して6名に1人は組合員ということです。推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は18.5%で、産業別の上位は、製造業、卸・小売業、官公の順となり、全体の49%を占めています。
平成21年 労働組合基礎調査
労働組合というのは横と縦の連携がしっかりとできている組織です。しがって、この1千万人が繋がっています。政治家が選挙で戦う上で、労働組合の支持を受けられるか否かで戦況が大きく変わるのはこのためです。
現在の不況のなかにあっては、組合員の減少は必然です。成長している産業で労働組合を作るしか、この組織が生きる道はありません。組織率の低下から、「新成長産業分野」として位置づけられ、労働集約産業である介護・保育の分野で労働組合が拡大していくことが予想されます。なぜなら、介護保険制度の導入で介護市場には急速な拡大が生まれているが、介護サービスを担う介護労働者の雇用や労働条件は不安定な場合が多い。そのため介護労働者を地域横断的に組織し、厚生労働基準を確立する必要性を訴えているからです。労働組合にとっても福祉産業は新成長分野なのです。
労働組合に明確な意志を持って参加(加入)している人というのは少なく、積極的に組合に頼ろうとしない人が大多数です。組合費は、月給とボーナスを含めた年収の約1%前後で、月額で3千~5千円という金額設定です。普段は給料から天引きされているため、その金額の重さはあまり意識されませんが、組合自体の活動が形骸化してきている近年の状況でも、組合費が値下げされることもなく給料から天引きされています。確立された集金システムと、「組合費×組合員の数」による資金力は莫大で、全国で1千万人の労働者が1人あたり平均で3千円/月を給料から天引きされているとすれば、毎月300億円。年間で 3600億円が労働組合の活動費として集金されていることになります。
労働組合費がどのように使われているのかというと、会社側との団体交渉のために専従となっている組合スタッフの人件費、組合員との会議や集会の開催、会報の制作~配布を行なう活動費として使われているのは5割以下に過ぎず、残り半分の組合費は上部団体や関連団体へ送金されているのが実態です。欧米では労働組合が職種・職能別に組織化されていて、各労働者が自分の職種に適した組合へ個人加入する方式になっていますが、日本では企業別に労働組合が設立されていて、正社員であれば加入することが条件になっています。しかし労働問題というのは会社内だけの問題に留まらないという理由から、その上部団体として産業別の労働団体(自動車総連、電機連合、日教組、生保労連など)が組織化されており、さらに各産業を取りまとめる全国中央団体(連合、全労連、全労協)という三階建ての構造になっています。そのため給料から天引きされた組合費は「企業組合→産業別組合→中央団体」と上納されていく上納金システムが完成しています。
中央団体では、この資金を労働者の生活を改善するための法律改正を訴える政治活動に使っています。政治の世界からみると、労働組合というのは格好の集票団体であり、集金団体であることを理解しておかなければなりません。集金システムの役割からすると、労働組合が自発的な解散をしていこうとする流れには向かわないはずです。労働組合は完成された団体ビジネスなのです。
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