2010/01/25

思想が行動を生みルールを創る

米国、オバマ政権が1月22日、新たな銀行改革案を発表しました。
1.自己資金を用いた証券売買を制限する
2.銀行によるヘッジファンド所有およびヘッジファンドへの投資の禁止
3.銀行が抱える負債規模の制限
この規制が実施されると、ドルキャリートレードは逆転する可能性が高く、新興国や商品に投下されてきた莫大なマネーが回収されることになります。

大衆社会とは、数で決まる社会です。「正しさは力だ。力は数だ。」というのが大衆の言説の原則です。大衆とは有権者という意味です。多数決の決定に逆らえる政治家はいません。
アメリカで貧困層の定義は、年収規模で220万以下です。これは日本の200万円とほぼ一致するラインということになる。アメリカでは、日本以上の市場原理主義の弊害が起こり、日本の「中流」と同じ意味に使われる多くの中間層が貧困層に転落してしまっている。
出典 「ルポ 貧困大国アメリカ」(堤未果著 岩波新書)

2008年の貧困者は39.8万人、貧困率は13.2%です。
年間所得5万ドル未満が80%以上を占めています。
Number in Poverty and Poverty Rate
Detailed Income Tabulations from the CPS
出典 米国勢調査局(Census Bureau)  

日本は、阪神大震災の時でも暴動や略奪は生じませんでした。誰もが社会のシステムによって守られていると感じているからです。米国の下級階層は、社会のシステムによって抑圧されていると感じています。だから一番最初に暴動や略奪に参加するのです。貧困層と失業率の増加は、社会的混乱の源泉です。

ペーパーマネー経済は1971年から始まりました。構造の変革です。為政者は通貨の発行量を恣意的に拡大してきました。現在の金融システムにおいて、金融機関は儲かればボーナスで回収し、損すれば国民の税金で充当させています。通貨量の膨張と金融モラルの常識を逸した行動の結果です。不良債権処理をすればするほど、国家経済は悪化していき、不良債権処理を止めるまで続きます。日本の不良債権処理と構図は同じです。世界は、物質的な裏づけのない通貨でどれだけの経済安定を保ちえるのか。壮大な実験中なのです。
「行動にはつねに動機があり、目的がある。動機が正義であり、目的が善であって、その行動だけが悪だということは、人間にはありえない。行動を生む動機とか目的は、その人間の思想が組み立てるものだ。思想が正しくなければ、正しい行動は生まれない。何をするかより、何を考えているかが重要なのである。行動という刃物が、利器なるか、凶器となるかは、その行動を支える思想あるいは理論が正しいか、正しくないかによって決まるのだと思う」
本田宗一郎氏が語った言葉です。

思想が行動を生みルールを創ります。問題解決は、事を大きくしていかないと解決に向かいません。物事を正常化するのでは解決できないのです。どのような解決策を選ぶかという思考法でなく、どのような結果にするかが大切です。

願望の論理は未来志向です。未来は的確に分析しても的中する保証はありません。必然ではなく偶然が支配する世界だからです。予測と判断が誤ることは避けられません。誤らないのは、予測し判断しない人達です。現実の結果を淡々と受け入れていく受動的な思考と行動の持ち主です。未来の予測は、強烈な論理力を必要とします。

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